院長の独り言「脊柱管狭窄症の治し仕方②」
脊柱管狭窄症について
高齢になるにつれて脊柱管狭窄症の診断を受けるケースが増えてきます。
前回お話しした通り腰椎の関節が変性を起こす病気なので、加齢による影響が大きいのです。
では、年を取れば誰もがかかる病気かといえば決してそうではありません。
脊柱管狭窄症にかかる人とそうでない人は何が違うのか?そのメカニズムとともに考えてみましょう。
一般的な腰痛やギックリ腰そしてヘルニアも脊柱管狭窄症も、実は発症する形態こそ違いますが、根本的な原因は「姿勢」が必ず絡んでいるということです。
「姿勢」の話しに「大腰筋」は欠かかすことのできないワードになりますので、少し「大腰筋」について説明をさせてください。
大腰筋は腹筋の一番奥にある筋肉で、内臓よりもさらに深いところにあり、5つある腰椎にくっついて(胸椎12番にも)股関節の付け根(前面)に付着します。
重力に対して正しい姿勢を取るには、この「大腰筋」が働くことでのみ達成されることはご存知だったでしょうか?
もともと日本人は、この大腰筋がか弱いという民族性をもっております。
四方を海に囲われた山岳湿地帯では、ぬかるみに対して中腰で踏ん張ったりしゃがんだりする文化が育ち、農耕具や武術などでもわかるように「引く文化」が育ちました。
鋤(すき)や鍬(くわ)で引き、ノコギリさえも引いて切ります。西洋ではノコギリは押して切ります。柔道や相撲も引き手の競技です。舞踊も腰を落とし小股ですり足移動し首をかしげます。
西洋人の大腰筋は日本人の1、5倍から2倍の太さがあります。だからボクシングやバレエなどのように、前へ上に高く、大きく・・・といった文化が育ったのだと考えられます。
正しい姿勢からの逸脱が腰に影響を与えるのは容易に想像できるところですが、大腰筋の弱い日本人は骨盤が後方に落ち背中が丸くなる傾向にあります。
それは海外において遠目でも日本人だと分かってしまうのが、その歩き姿の汚さにあるといわれます。
大腰筋は姿勢を維持するための最も大切な筋肉です。この筋肉を使えずにいれば、年齢相応に日本人特有な姿勢になってしまうのです。
さて日本人はあぐらが大好きです。小さい頃からの体育座りも骨盤を下げる姿勢に陥る習慣を根付かせます。
このような骨盤の下がった姿勢は腰椎の5番に最もストレスをかけます。
年齢とともに仙骨と腰椎5番の間の椎間板が狭くなり、腰に極度の負担がかかれば椎間板ヘルニア(若年)、姿勢が悪ければ変形性椎間板症(軟骨がすり減っている)、そして加齢により脊柱管狭窄症と年齢とともに病名が変わっていくのです。
骨と骨の間の椎間板は20才までは血液供給により栄養を受けますが、それ以降は血管がなくなり残った脈管系のポンプ作用が関節運動により行われ、体液循環によって栄養を受けます。
腰椎5番が姿勢の悪さによって動きが悪くなると、若くみずみずしい時はヘルニアに、年齢とともに栄養不足で変形性椎間板症そして加齢が進めば脊柱管狭窄症になります。
大腰筋が弱い日本人は、姿勢が保てず猫背になって骨盤が下がりO脚になっていきます。
丸い背中がひとつの塊になり、股関節の動きが悪くなると、仙腸関節や5番周辺に大きな動きが強要されます。
動きすぎればギックリ腰など腰にとって脅威となるため、5番周辺の筋肉はなおさら固くしてそれを防ごうとします。
これらのメカニズムが、多くの年代で腰痛を引き起す原因となっているのです。
このようにして見ると、年代によって発生機序や病態は変化していきますが、姿勢によって引き起されるこれらの腰痛というものは、ほぼ同じ原因によるものと考えてよさそうです。
では、姿勢を正すことが痛みを取り除き、根本から病態を改善させるものだとして、どのような治療を施してそれぞれの症状を改善させるかの説明が必要になります。
今回は脊柱管狭窄症に関するお話しなので、次回からこの脊柱管狭窄症に対する治療法を考えてみたいと思います。
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