「治療院事件簿Ⅲ」

2008/10/11 ブログ
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「またぐ」か「外」か二者択一をせまられた私は、勇気をもって外から回ることに決めた。四の五の云ってる場合ではない。もし、「ヤツ」が気配を感じて何かしらの行動を起こした時、はたして血液を怒涛のごとく全身にバックン・バックン送り続けている、この心臓がもってくれるのか?

我が身可愛いさに、どんな恥をしのいでもここは一旦外に回避する方法をとるべきだろうと、そっと勝手口のドアノブに手をかけた。そしてもう一度大きく首を振った。「やっぱり外はだめだ!!」体裁をとるか、ぎりぎりこの心臓に賭けてみるか。相変わらず動きを見せない「ど変態鬼畜ヤロー」から視線をはずすことなく、迷い続ける自分がいた。

「時間がないぞ。9時には山口さんが来る。どうする!」

来院時にはカウンターにいて、「おはようございます!」と立ち上がって挨拶をしたいと思う律儀な私。どうにかして速くこの状況を打破する必要があった。

「またごう!」・・決死の覚悟であった。

決意を固めた。ゆっくりと立ち上がったら、1メートルと50センチを2歩で進み、80センチ程大きめにまたいでそのままドアを開いて治療室に入ろう。そう、その間は決して下は見ないで、そしてすぐにドアは閉める。極力音、振動はたてないように。私は何度か頭の中でシュミレーションを繰り返した。脈拍は速さを増し、心臓はドカンドカン顔面へそして四肢末端へも容赦なく無駄な血液を送り続けている。全身がしびれてきた。限界が近づいてきている。立ち上がって治療室へ入るためのドアノブだけを見つめる。(どうかシュミレーション通りに!)

「今だ!!」一歩、二歩、さ~ん歩、「カチャ」「パタン」・・・

・・・・完璧だった。案外あっさりと、いとも簡単に、シュミレーション通りに、ことは今、成就した。

       - 続く -