「最近の施術例」

2008/10/14 ブログ
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昨日体育の日は秋晴れでした。テニスでたっぷり汗を流しました。

今日は症例報告です。

先日、筋肉質でがっちりした体格の方が来院しました。元キックボクサーで、ここ10年ほどウェイトトレーニングで身体を鍛えまくっている人です。ベンチプレスでトレーニング中に右肩を痛めて、1月半ほど痛みでトレーニングが出来ない状態での来院でした。

腰にも辷り症があり、肩の挙上(バンザイ動作)もできず、日常生活にもかなり支障をきたしているようでした。まずは立位でのバランスから診ました。多くは右脳・左脳の関係で利き手利き足の右を有利に動かすため、左足に若干重心が移動しているケースが多く、これは左利きでも優位になっているようです。

まずは三軸修正で立位の前後・左右の側屈・回旋のバランスを大まかに取ってしまいます。三軸修正とはコリオリ・プレセッションといった物理力を身体に応用した手技です。時計周りに回って安定しているコマの軸を前方に倒そうとポンと押すと、90度右に倒れようとする力が働きます。そんな力を利用して身体をわずかに倒したり回すことで全体のバランスを整えます。

次に、足から股関節、仙腸関節を整え下半身を安定させます。後は上半身の可動性のない箇所を探してリリースするだけです。例えば右手を挙げる時の動作は、重心を少し左へ移動し骨盤、脊柱もわずかに左へ倒しながら肋骨も少しずつ動き、肩甲骨を挙上し最後に肩の筋肉を使って手を挙げるという一連の動作が必要となります。

右手の挙上には、足・膝・股関節・仙腸関節・脊柱・肋骨・肩甲骨・肩関節それぞれが正常に動きそれらに関わる筋・筋膜が正常に伸び縮みする調和が必要になります。これらの組織の中のどこかに異常があれば肩に支障がでるのです。

このケースでは左の股関節・仙腸関節の可動減少と、右小円筋・大・小胸筋・鎖骨下筋の筋短縮がありました。PNFとTPs治療、腱圧療法を行い、頚椎5番のアジャスト、後は腰椎辷り症に対する特異的なPNFを施し、最後に胸鎖関節を検査し(CW療法による脳反射テスト)、下外方60度の方向にドロップアジャストを行いました。

肩甲骨は筋肉のみで身体に浮いた状態にあり、胸鎖関節は肩甲骨が鎖骨を通じて、上肢が身体に関節する唯一の場所です。肩甲骨周囲の筋バランスを整え、最後にこの胸鎖関節を施術し肩の機能障害を治療することはとても重要です。

治療後は、肩の痛みが取れスムーズに挙上でき、腰もここ数年味わったことがない位楽になりました。またトレーニングを再開してもらい、確認のため再来して頂きましたが、ベンチプレスも問題なく行えて快調のようでしたので、治療は2回で終了しました。

原因が単純でもともとエネルギーに満ちた人は、治療も治りも早いのですが、複雑に絡み合って歪みが長期に渡ると、なかなかスムズにリリースしてくれないことがあります。我慢は禁物ですよ。

よく痛みは筋力の低下からくると云われ、トレーニングで筋力をつけ痛みを取ろうとする方がいますが、筋力があっても故障する人はいるし、筋力がなくてもバランスのよい人で何の症状のない人もたくさんいます。

バランスのよい身体とは、「負荷が分散」でき「連動できる身体」をもった人です。各関節、筋・筋膜が正常でそれぞれが少しづつ動いて負荷が分散され、全体が調和して連動した動きができれば、痛みやコリから解放されます。

パフォーマンス中や日常生活中に痛みが生じた時、どうしても痛みの起こった腰や肩に目が行きがちですが、そこに負担をかけてしまう原因箇所がどこかに必ずあります。痛みは身体が発するサインです。身体は痛みでしか訴えることができません。

身体は無理がかかると、耐えた後ある所に痛みを出しますが、痛みの部分以外に筋の緊張や関節の拘縮があり、関係のなさそうの箇所が痛くてびっくりするケースがよくあります。痛みがあったり、運動がしっくりこない方には、早めに重力バランスと原因治療をして、気持ちよく仕事に運動に励んで頂きたいと思います。