院長の独り言(「1Q84」)
2009/06/30
「1Q84」を読みました。
村上春樹の作品はかなり前に「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」この題名に惹かれて思わず買って読んだ記憶があります。
学生の頃は片岡義男「スローなブギにしてくれ」「湾岸道路」(いずれも映画化)や大藪春彦、北方謙三などハードボイルド系にはまっていた時期がありました。
当時村上春樹の作品はどんな小さな書店に行っても必ずハードカバーでドーンと置いてあったのでいつかは読んでみようかと思いつつ、「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」はたまたま題名につられて買ったものでした。
内容はチンプンカンプンで、訳のわからんそれこそ空想のワンダーランドに「なんじゃこりゃ?」でした。そもそもこの作者にギンギンのハードボイルドを求める方が間違っているのですが・・・
当時から村上春樹は村上龍と並び称されていて時代の先端を行く小説家だったように思います。
その昔、村上龍は岡部まり(知的でめっちゃ可愛かった)と「RYU`S BAR」と云うなんとも話しの弾まないトーク番組をやっていました。ゲストとの気まずい沈黙を平気で酒を飲んでタバコを吸いながら進める番組で、それでもよく見ていた記憶があります。
(岡部まりの笑顔が沈黙を何とか繋いでいた・・・間が悪くなると岡部まりが笑顔で「んっ?」と村上龍に顔を向ける・・・「あっ、そうそう・・・」と村上龍がゲストに話題をふる・・・結構緊張感のある空間があった・・・)
それでも妙におしゃれな感じがして、都会のバーでいい女を横におきバーボンをロックでこじゃれた話しで静かに飲む・・・ちょっと憧れたりもしました。
「ベットタイムズアイズ」で鮮烈デビューした山田詠美とのトークでは「最近、いいSE○してる?」と村上龍が切り出せば、山田詠美も笑顔で「まあまあね・・」・・・(この二人どうかしてる。作家ってのは少し頭おかしいんだと思ってた。まあ山田詠美の作品も流れるようでいて歯切れのいいテンポある表現ではあるが、内容は過激だった。)
バブル景気の前後で、田中康夫の「なんとなく、クリスタル」や「スローなブギにしてくれ」(浅野温子はたまらんかった、南佳孝の音楽もすごくいい)などいい女と危なっかしい男がもてはやされていた時代かもしれません。
村上龍の「限りなく透明に近いブルー」もそんな危なっかしい題材の小説でした。
村上春樹に関しては、同じ村上でもちょっと見た目地味(年齢も少し上)ではあるけれど、やはりこの時代に生きた人間の性(さが)をひきずっている気がします。
「1Q84」は、何ともノスタルジックな懐かしい匂いのする作品です。作品の根底にある、当時の子供たちが抱えるどこかに覚えのあるタブーを、深層に抱えて閉じ込めていたものを弾き出すように、それらと真正面から向かい合いながら1984年の世界で話しは進んでいきます。
当時起こった宗教問題や世間を揺るがした事件も、空想でありえない展開の中で読み進む内に、人間の心はかように純粋であるからこそ大きな間違いに進むことだってありうるんだと・・・という錯覚に陥ってしまいます。
幼いころの(非現実化への思いが起こす)空想と、大人になってからその答えを導き出そうとする疑問や迷いが、大きな葛藤となって更なる悩みや苦しみを生んでしまいます。
「説明しなくてはわからんというのは、どれだけ説明してもわからんということだ」と云うフレーズがあります。人はなにかと答えを探し出そうとするけれど、ありもしない本当の答えを知ろうとして実際は間違った方向に進んでしまうことが往々にしてあるということかもしれません。
「全てに意味を見出すことがいいことだとは云い切れない」・・・しかしそこに踏み込んだとき、この妙なファンタジーの世界が現実味を帯び、つい村上春樹のワンダーランドに引き込まれてしまう・・・そんな印象を受けました。
夢中で読んで面白かったけれど・・・子供らにはちょっと読ませられないなあ。
何せこの年代の作家たちは、この手のHな描写は文化的とさえ思っているきらいがあるので・・・
たぶん「1Q84」BOOK3が出れば・・・買って読みたいですね。
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