院長の独り言(イチローは何故「ヘッドスライディング」をしないか?⑥)
2010/11/17
かの「イチロー」は絶対にヘッドスライディングをしません。
WBCの時も、日本のチームメイトにヘッドスライディングはするべきではないと諭していました。
肩関節脱臼をさせる一番の発生原因は前方への転倒です。手を付いて肩を挙上、外転、外旋させた状態が、一番リスクの高い状況になります。
バレー選手のように、床の上で身体を反らし、腹で滑りながらのレシーブを練習で繰り返していれば、リスクはほとんどないでしょうが…
野球ではもちろんヘッドスライディングの練習などしないし、プレー中のヘッドスライディングなど、土のグランドではなおさら怪我をする可能性は高くなります。
肩は一度脱臼すると例外なくほぼ習慣性に移行します。(ギブスなどで強固に固定してもスポーツ選手にとって治癒は難しいし、千代の富士のように筋力をつけてなお習慣性は免れなかった。)
先日、高1で野球部の息子が学校の体育の時間、転倒した時手を着いて左肩を痛めました。
練習から帰った息子からその話しを聞き、すぐに脱臼の可能性から検査する必要があると思いました。
本人に聞けば「一瞬外れたかも知れない」とのこと…
肩の脱臼は上記の発生機転であればほとんどが下方脱臼(腋下脱臼)です。
腋(わき)の下には腋下神経が通っていますので、下方脱臼で骨頭が腋の下の関節包を破れば、この神経を強く刺激します。
一瞬の亜脱臼でも神経への圧迫は強いので、腋下神経の知覚領域である、三角筋部位の皮膚領域に知覚障害を起こします。
息子の両肩を交互にサラサラと撫で上げました。「左の感覚は?」と尋ねると「ん~鈍い感じ」と息子…
そして「じゃあ、ここ痛いだろ」と、腋の下を少し押すと「痛っ!」…「ここから骨頭が外れたんだよ、やっぱり脱臼したんだな」
私も息子も大きくため息をつきました。
私の脱臼癖は息子もよく知っています。それで野球を辞めたことも。そして一度の脱臼はほとんど習慣性になってしまうことも…
但し、今回は幸いなことに左肩。右投げなので痛みが落ち着けば、バッティングやプレーに支障はありません。幾つかの注意事項を守れば練習も間もなく再開出来ます。
ひとつだけやってはいけないこと…それは「ヘッドスライディング」
「走塁ではもちろん、守備中のヘッドスライディングは絶対ダメ、今度やったら本当に完全脱臼するから」
小・中学校とよく試合中に、ヘッドスライディングをしてはチームを盛り上げてきたと自負する息子ですが…「分かった」と神妙に答えながら、悔しさに顔を歪めるのでした。
しかし悪いことは続くもので、その10日後、守備練習中に小フライを捕りに行き、ついヘッドスライディング…2度目の亜脱臼です。
一度目は驚異的な回復で症状が軽減したものの、今回は先生の車で私の治療院に送られて来る間の振動にさえ、痛みが生じる状態です。
3週間が過ぎ、本人の希望で、固定をしながら出来る練習には参加をしているようです。(野球は続けます!)
イチローが何故「ヘッドスライディング」をしないのか?
いつから決意したか定かではありませんが…一流ならではの洞察力と、信念に基づいた「プロ意識」が垣間見える気がします。
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